股関節痛で来院されたランナーの特徴
今回は、股関節の動きが悪く、ランニング中に痛みまで出ていたランナーのお話です。
走る最善策を常に探し求めて、知識向上の努力を惜しまないとても頭の良い方です(^^)
最初に来院された時は、右股関節の可動域が悪く、走ると痛みも出ていました。
施術によって可動域は改善し、痛みもなくなりましたが、今でも身体の使い方の確認やコンディションを整えるために定期的に来院されています。
今回は、この方の股関節の動きの特徴について書いていこうと思います。
フォームを確認すると、右脚の接地時間が左より長く、右股関節をうまく使えていませんでした。
そのため、本来なら全身で受け止められるはずの着地の衝撃や推進力を、すべて右股関節周辺だけで受け止めるような走りになっていたのです。
その影響で筋肉が硬くなりやすく、可動域も悪くなっていたと考えられます。
腕振りを変えると股関節の動きも変わる
そこで最初に見直したのが、意外かもしれませんが「腕振り」です。
ランニングというと脚ばかりに意識が向きますが、実は腕振りは股関節の動きに大きく影響します。
ぼくが多くのランナーを見ていて感じるのは、腕を振る時に身体まで一緒に捻(ねじ)ってしまう方が本当に多いということです。
もちろん、走っている以上、身体は多少捻れます。
ただ、その動きが大きくなり過ぎると、前へ進むため以外の動きが増えてしまい、どうしても大きなロスが生まれます。
理想的な腕振りは、以下の通りです。
- 肩に力を入れない
- 横から見て上腕骨頭を支点として、肘を後ろへ引くように振る
- 前へ大きく振り出そうとしない(身体の横で止めるイメージ)
- その際、なるべく身体を捻らず、肩関節だけの動きにすること
腕振りにはまだまだ細かいポイントがありますが、まずはこの基本中の基本ができることが大切です。
基本だから簡単かというと、これがまた難しいんです(笑)
走ることは誰でもできます。
しかし、「効率よく走る方法」を教わる機会は意外とありません。
だからこそ、基本ができていないランナーが意外と多いのです。
実際、腕振りを修正しただけでも、この方は「右股関節がだいぶ動かしやすくなりました」と話してくださいました。
なぜ「殿筋を使う」ができないのか
ただ、それだけでは終わりません。
次に修正したのが、股関節と骨盤の動きです。
この方は右側の骨盤が後傾(後ろに倒れる状態)しやすく、その状態で脚を後ろへ送ろうとしていました。
そのため、着地の衝撃や蹴り出しの力が右股関節周辺に集中していたのです。
ここで世間でよく言われるのが、次のようなアドバイスです。
- 「殿筋を使って蹴りましょう」
- 「ストライドを大きくしましょう」
- 「骨盤を立てましょう」
ランニング系のYouTubeでも、本当によく聞きますよね。
誤解しないでいただきたいのですが、ぼくはこれらの考え方が間違っていると言いたいわけではありません。
ぼくも最終的には、そのような走りを目指しています。
しかし、それらを実行する前にやるべきことがあります。
本来、「走る」という動きは、筋肉の力だけで地面を力任せに蹴るものではありません。
脚の腱、特にアキレス腱のような「バネ」を利用しながら、パンパンと弾むように進んでいく方が、少ない力で効率よく走ることができます。
ところが、この腱のバネをうまく使えている市民ランナーはあまりいません。
なぜかといえば、誰も教えてくれないからです。
陸上競技をしてきた人は、基礎的なドリル(練習)を繰り返す中で、この感覚を自然と身に付けていきます。
しかし、市民ランナーの場合はどうでしょうか。
インターバル、坂道、ロング走……練習メニューの組み方はいくらでもネットに出てきます。
でも、「どう走ればその練習が活きるのか」という、一番大事な身体の使い方を教えてくれる人は驚くほど少ないのです。
「殿筋を使う」「骨盤を立てる」と言われても、身体がその動きを受け入れる準備(可動域やアライメント)が整っていなければ、再現するのはかなり難しくなります。
トップランナーのフォームを見て、「あのフォームを真似すれば速く走れる」と思ってしまう方もいます。
しかし、それは順序が逆です。
まずは、「正しく身体を動かせる状態」を作ることが先決なんです。
フォームを変えるのではありません。
フォームが変わる身体を作るんです。
股関節の動きは脳に覚えてもらう
そのため、この患者さんにも股関節と骨盤が正確に動くように、何度も繰り返し練習していただきました。
ここでやっているのは筋トレではありません。
筋肉を鍛えているわけでもありません。
「正しい股関節の動かし方」を、脳に新しく覚えてもらう作業(運動学習)なんです。
なので、一回できたから終わりではありません。
何度も繰り返して、「これが正しい動きなんだよ」と自分の脳に教え込む必要があります。
脳が正しい動きを覚えると、着地した時に衝撃を感じる場所が変わってきます。
今まで股関節周辺だけで受け止めていた衝撃が、体幹を含めた全身へ分散される感覚に変わってくるんです。
ぼく自身、この変化を「股関節をうまく使えているかどうか」を判断する一つの目安にしています。
(※もちろん、骨格や身体のクセは人それぞれ違いますので、実際にお伝えする内容は患者さんによって細かく変わります。)
正しい順番が、結果的には一番の近道
そして、この土台ができて初めて、次のステップである「腱のバネを利用した走り」の練習へ進みます。
この感覚を身に付けると、本当に驚くほど楽にスピードを上げられるようになります。
ただし、順番だけは絶対に間違えてはいけません。
基本的な身体の使い方ができていない状態で、腱の反発(バネ)だけを使おうとすると、アキレス腱やふくらはぎ、膝などを痛めるリスクがかなり高まります。
だからぼくは、最初から「腱を使って走りましょう」とはお伝えしません。
- まずは腕振りを整える
- 次に股関節と骨盤の正確な動きを作る
- 土台ができて初めて、腱のバネを利用する
一見すると遠回りに思えるかもしれません。
しかし、この順番を堅実に守った方が、結果的には早く走れるようになり、何よりケガをしにくい強い身体になっていきます。
「練習を頑張っているのに、なぜか股関節や膝が痛む」「フォームを意識しても上手くいかない」という方は、ぜひ一度、ご自身の動かし方の順番を見直してみてくださいね(^^)
ご自身の身体のクセや正しい動かし方が分からない方は、一度当院にご相談ください。
現状のフォームと身体の動きを分析し、最適な順序をお伝えしますよ(^^)

