世界初のサブ2達成!サウェ選手は何を飲んでいたのか?糖質補給戦略から学ぶマラソンの新常識

世界初のサブ2を達成したセバスチャン・サウェ選手の糖質補給戦略を図解。5kmごとの補給タイミングや糖質摂取量、市民ランナーが参考にできるポイントを紹介。

2026年4月、ついに人類は公式レースで初めてフルマラソン2時間の壁を突破しました。

舞台はロンドンマラソン。ケニアのセバスチャン・サウェ選手が1時間59分30秒でゴールし、歴史的な偉業を達成しました。

近年は厚底シューズの進化によって世界記録や日本記録が次々と更新されてきましたが、今回ランニング界で大きな話題となったのはシューズだけではありません。それが「糖質補給戦略」です。

実はサウェ選手は、レース中に1時間あたり約115gもの糖質を摂取していたと報じられています。これは従来のマラソン界の常識を大きく超える数字です。

今回は、

  • サウェ選手は何を補給していたのか
  • なぜ後半にペースアップできたのか
  • 市民ランナーは何を真似すれば良いのか

について解説します。

サウェ選手は何を補給していたのか

スポーツ栄養メーカーMaurten社の発表によると、サウェ選手はレース前から綿密な補給計画を立てていました。

レース当日の朝には、乳酸の蓄積を緩和する目的で重炭酸ナトリウム(バイカーボネート)を摂取。スタート直前にはジェルを補給し、レース中は5kmごとに約160mlの糖質入りドリンクを摂取していました。また、ハーフ地点付近ではカフェイン入りジェルも使用しています。

レース全体で摂取した糖質量は約230g。2時間のレースに換算すると、1時間あたり約115gになります。

注目すべきなのは115gという数字ではありません。サウェ選手は「エネルギーが切れてから補給する」のではなく、「エネルギーが切れる前から補給する」という戦略を徹底していました。

なぜそこまで糖質が必要だったのか

マラソンは脂肪を燃やして走る競技と思われがちですが、ペースが上がるほど糖質への依存度は高くなります。特にサブ2ペースともなると、脂肪だけでは必要なエネルギーを十分に供給できません。

一方で、体内に蓄えられる糖質には限界があります。そのため、多くのランナーは30km付近からエネルギー不足に陥り、いわゆる「30kmの壁」を迎えます。

脚が重くなる、フォームが崩れる、集中力が低下する、ペースが落ちる。これらは筋力や走り込み不足だけでなく、エネルギー不足が関係していることも少なくありません。

だからこそ現在のトップランナーたちは、「糖質を節約する」のではなく、「糖質を切らさない」という考え方へシフトしています。

実は後半の方が速かった

今回のレースで特に驚いたのが、後半の走りです。

サウェ選手は前半を1時間00分29秒で通過し、後半は59分01秒で走っています。フルマラソンでは後半に失速する選手がほとんどですが、サウェ選手は逆に後半の方が速かったのです。

さらに30km付近でペースメーカーが離れた後もペースは落ちませんでした。むしろそこから加速しています。

もちろん、サブ2達成は補給だけで実現したものではありません。トレーニング、才能、シューズ、気象条件など様々な要素が組み合わさった結果です。

しかし、これだけの高い出力を最後まで維持し、後半にさらにスピードを上げられた背景には、エネルギー切れを起こさなかったことも大きく関係していると考えられます。

同じレースでも補給戦略は違っていた

興味深いのは、2位だったヨミフ・ケジェルチャ選手との違いです。

海外メディアによると、ケジェルチャ選手は一部の補給を見送り、40km地点では補給を行わなかったと報じられています。

もちろん、この違いだけで順位が決まったわけではありません。しかし、世界最高レベルの戦いになるほど、補給戦略も勝敗を左右する重要な要素になっていることがわかります。

本当に凄いのは115gではない

ここで勘違いしてはいけません。

サウェ選手の凄さは115gという数字ではなく、その量を問題なく吸収できる身体を作っていたことです。

近年のマラソン界では「ガットトレーニング(腸トレーニング)」という考え方が広がっています。

これは、走りながら糖質や水分を吸収する能力を高めるためのトレーニングです。

どれだけ補給を持っていても、胃腸が受け付けなければ意味がありません。

脚や心肺だけでなく、胃腸もトレーニングの対象になっているのです。

サウェ選手も約1年かけて補給計画を検証していたと報じられており、今回のサブ2は「脚力」だけではなく、「補給を吸収できる身体づくり」に支えられていたとも言えるでしょう。

では市民ランナーはどうすれば良いのか

市民ランナーが115gの糖質を摂る必要はありません。むしろ急に真似すると胃腸トラブルの原因になる可能性があります。

まずは1時間あたり30〜60g程度の糖質補給から始めてみましょう。そして、20〜30分ごとに計画的に補給する習慣をつけることをおすすめします。

また、本番だけでなく20〜30km走などのロング走でも補給の練習を行ってみてください。レース当日に初めてジェルを使うのではなく、普段から胃腸を慣らしておくことが、後半の失速予防につながります。

もちろんロング走だけでなく、スピード練習の前に飲むこともおすすめしておきます。

いつもと違う感覚が出てくると思います。

「トップ選手のようなスピードで走るわけじゃないから、自分にはそこまで糖質なんて必要ない。」と思う方もいると思いますが、スピードというか乳酸の処理能力は人それぞれです。
(実はこの糖質摂取の話は乳酸が大きく絡んでくるのですが、今回そこは全く触れておりません。)
多くのランナーに今回の記事に書かれてる「糖質の恩恵」を感じていただけたらと思います。

まとめ

世界初のサブ2達成の裏側には、シューズやトレーニングだけでなく、補給戦略の進化もありました。

サウェ選手から学ぶべきなのは115gという数字ではありません。

  • エネルギー切れを起こす前に補給する
  • 補給もトレーニングの一部と考える
  • 胃腸も鍛える

この考え方です。

マラソンは脚力だけの競技ではありません。補給もまた、記録を左右する重要なトレーニングの一つなのです。