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変形性股関節症症例1-2

前回は筋肉をほぐしたり動かすことを主に考えておりましたが、先週お越し頂いた時に直感的に閃いたことがありました。
Oさんの主訴である「左膝上の痛み」が一体何なのか。
手技が終わった直後やほぐしてる最中にも固まった感が出るのは普通では考えられません。
筋肉をほぐせばまず痛みや固まった感はなくなります。
ぼくが直感的に閃いたことは「カルシウム沈着」です。
四十肩や五十肩に多いとされるカルシウム沈着がなぜOさんの場合膝上に来たのかをぼくなりの仮説で書き進めて参ります。
 
「カルシウム沈着」とは何らかの理由で血中のカルシウム濃度が高くなり関節周辺(主に肩)にカルシウムが貯まってしまう事です。
ここで重要なことは「何らかの理由」が何なのかを考えなければならないことです。
少し前に書いた記事にも書かれていることです。
「変形性股関節症が50歳前後以降で多い理由」
この記事の中の「閉経によるカルシウム不足」をもう一度ご覧ください。
Oさんの左股関節に異変が生じたのは2009年ですので、50歳を過ぎており多分閉経前後と想定されます。
そこから股関節の変形が生じてしまい現在に至ります。
Oさんはカルシウム不足からくる股関節の変形である可能性が高いとぼくは考えます。
では、なぜ今回のOさんの膝上の痛みと繋がるのかですよね。
骨からカルシウムが遊離すると血中に放出され主に尿から排出されますが、尿から排出されないカルシウムは原因は解明されておりませんが関節周辺に沈着してしまいます。
今回のOさんの場合、特異的にカルシウムが膝上に沈着したのではないだろうかと考えられました。
レントゲンを撮っても膝に異常はありませんし、痛みがある箇所の骨にも異常はありません。
2018.06.12膝_6
 
左大腿骨頭の骨密度は0.815g/cm2で、20-29歳の骨密度と比べても103%、同年代とは132%と高い値となっています。
しかし、腰の骨密度を見ると0.897g/cm2と37歳と比べて87%、同年代と比べて109%と左大腿骨頭と比べると低い値です。
この骨密度で考えられることが二つあります。
 
※二つの部位での骨密度しかわからないため一概に言えませんので、あくまで一個人の仮説と思ってください。
 
一つ目は、外力によって変形した左大腿骨頭を強化する必要があり、他の骨からカルシウムを補うため腰椎の骨密度が低下した。
二つ目は、閉経によって女性ホルモンが低下し、骨からカルシウムが溶け出し外力が加わる左股関節以外の骨密度が低下した。
この二つが膝上の痛みとどのように繋がるかが問題です。
これらの問題はどちらにせよ血中のカルシウム濃度が低下してしまい、左大腿骨頭にカルシウムが集中するということは両方に共通していることです。
左大腿骨頭に集まったカルシウムの余分なカルシウムが血流の方向や重力の問題により、膝の上に流れてきたということが十分考えられることではないでしょうか。
Oさんの股関節周辺や膝上をいくらほぐしてもすぐに固まった感が出るのは、カルシウムが筋肉に沈着してしまい、筋肉の動きを阻害してしまっているとぼくは考えるに至りました。
この仮説が正しければ、カルシウム沈着をなくせば膝上の痛みはとれるはずです。
 
カルシウム沈着を無くすには、逆説的な話ですがカルシウムを摂る必要があります。
血中のカルシウムが不足していると脳が判断することで骨からカルシウムが溶け出すのであって、血中のカルシウム濃度が足りていれば脳は余計な司令は送りません。
もしくは骨からのカルシウム流出が骨への刺激で行われている場合は骨を形成するビタミンやミネラルと十分なタンパク質を摂る必要があります。(このビタミン・ミネラルの種類は上のリンク先に書いてあります)
女性ホルモンの材料となるイソフラボンの摂取も必要でしょう。
ここにカルシウムだけでなく、マグネシウムを摂ることも大事です。
これらの栄養素を補充することで、ぼくの仮説の是非が問われます。
 
 
Oさんの血液検査を見せていただきました。
気になった点がいくつかありましたのでかなりザックリと書いていきます。
 
「胃の調子が悪い」ことが数年続いているようです。
これはもしかしたらピロリ菌の可能性もありそうな気がします。
もしくは、タンパク質分解酵素であるペプシンが不足していることも考えられます。
それによりタンパク質がうまく分解されず胃のムカつきなどの症状が出ることがあります。
 
めまい・たちくらみ・だるい・疲れやすい、などの症状もずっとあるようです。
これらは貧血の症状ですが、血液検査を見ても貧血ではなさそうです。
しかし、フェリチン値がないので、完全に貧血ではないと言い切れません。
鉄・葉酸・ビタミンB12・ビタミンCを摂り、ここでもタンパク質を十分に摂ることで改善されるのではないでしょうか。
フェリチンも足りていれば、副腎皮質の疲労が考えられます。
後述しますが、Oさんは副腎皮質ホルモンを出し続けている可能性があるからです。
 
GOT(AST)、GPT(ALT)は正常値範囲内ですが、年々数値が下がっていることが気になります。
これはビタミンB群不足が考えられます。
ビタミンB群が補酵素(特にビタミンB6)となってはじめてAST,ALTは働くことが出来ます。
ビタミンB群の摂取をお勧めいたします。
 
Oさんの血液検査で一番気になったことが、白血球と血小板の数が少ないことです。
Oさんの白血球数は年々減少傾向にあります。
白血球が少なくなるのはストレスが原因です。
このストレスとはもちろん股関節やその周辺の痛みと考えられます。
絶えず臼蓋と大腿骨頭が当たることで関節内部で炎症が起こりストレスが生じます。
股関節に痛みが生じてからこのストレスが続いています。
白血球数が少ないと免疫力の低下によって風邪などちょっとしたことで肺炎に繋がる恐れが高まります。
上記リンク先の記事の中にストレスによって活性酸素が大量に発生し、関節の変形が進むことは書きました。
このストレスを除去する為にビタミンCの大量摂取をお勧め致します。
 
白血球数低下とは逆に、コレステロール値が年々上がっています。
これもぼくの仮説ですので、そうなのかもしれないなくらいに思ってください。
白血球の役割は病原菌や異物から身体を守る防御作用です。
股関節の変形により異物化したものを除去しますが、股関節の変形が進むことで白血球が足りなくなります。
そこで次に体は次の段階に入ります(”段階”と書きましたが、最初から行われています。便宜上”段階”という言葉を使いました。)。
股関節の変形が進むにつれストレスによって白血球数が減り、抗ストレスホルモンである副腎皮質ホルモンを出さなければなりません。
この副腎皮質ホルモンを合成する際、コレステロールが必要になります。
ストレスが強ければ強いほどこのホルモンを合成する必要があるため、絶えずコレステロール が必要となります。
総コレステロールも増えてますが、コレステロールを必要な場所に運ぶLDL(悪玉コレステロール)も増えています。
HDL(善玉コレステロール)も多少増えていることを考えると、体のどこかにコレステロールを必要としている細胞がいるということです。
それが副腎皮質ホルモンではないかとぼくは考えます。
2015年からLDLは上がってますが、急激に上がりだしたのは2016年からです。

20132014201520162017
総コレステロール205mg/dl214mg/dl202mg/dl226mg/dl232mg/dl
HDL52mg/dl64mg/dl55mg/dl61mg/dl65mg/dl
LDL125mg/dl125mg/dl137mg/dl158mg/dl153mg/dl

 
確かにこの頃からOさんの股関節の変形は著しく進んでいます。
2016年と2017年のレントゲン写真はコピーしたものしかありませんでしたので、データとして保存されている年のレントゲン写真を貼ります。
2013
2013.01.04
2014
2014.04.14
2015
2015.12.16
2018
2018.06.12
 
骨の変形の度合いとコレステロールの値を見るとあながちぼくの仮説も間違えていないような気がしませんか?
変形性股関節症の方々の血液検査をたくさんみた訳ではないので一概には言えません。
所詮はぼくの仮説ですので参考程度にしてくださいね( ^ω^ )
 
この仮説が正しければ、やはり最優先されるべきこととして、股関節に炎症を起こさないことです。
その為にもビタミンCを大容量で摂取し、骨の変形を止める為にも上記リンク先に書かれている骨形成に関与するビタミン・ミネラル・十分なタンパク質を摂る必要があります。
 
タンパク質について少し書き足さなければなりません。
Oさんの尿素窒素(基準値より低いとタンパク質摂取不足、もしくは重症の肝機能障害の場合もあります)の数値は一般的基準値内ではありますが、実は低値です。
Oさんは5年前の段階から尿素窒素の値は平均10.3mg/dlと常に低いままです。
肝機能障害はなさそうなので、Oさんの場合タンパク質不足が考えられます。
どんなにビタミンやミネラルを摂っても、一番の基礎となるタンパク質が足りないと意味をなしません。
Oさんがまず何より優先すべきはタンパク質の摂取でしょう。
そこの栄養指導はなるべく毎回口うるさくぼくも伝えているつもりですが、今回のこの記事でより深くご理解頂けたと思います。
是非タンパク質の摂取をお願いします( ^ω^ )
もちろんタンパク質だけでなく、他の栄養素も摂ることを強くお勧め致します\(^o^)/
 
 
かなり長くなりましたが、ぼくもとても勉強になりました。
何度も何度も血液検査の結果を見ては本を読み返したり、グーグル先生に問い合わせました。
それでつくづく思いましたが、人間の体は本当に良く出来ています。
それぞれ意味があってそれぞれが動いてます。
ということは、Oさんの膝上の痛みも意味があって痛いはずです。
それを今回科学的に(ぼくの仮説も含まれますが)解説してみました。
これでOさんの膝上の痛みがとれたら革命的なことではないでしょうか。
世の中の関節の変形で悩まれてる方はOさんの結果に左右されていると言っても過言ではないとぼくは思います。
ぼくは何とかしてOさんの痛みをとりたいです。
症例集1でも書きましたが、揉みほぐすだけが全てではありません。
揉みほぐして痛みがとれる方の方が多いことは事実です。
当然、経営としては揉みほぐしている方が良いに決まってます。
栄養なんてぼくが何する訳ではなく、本人がすべきことですからね。
しかし、経営のことなんて二の次三の次ですよ。
とにかくぼくはOさんの痛みを何とかしたいだけです。
それが自分を高めることであればお金のことを考えてはいけませんし、そうあるべきだと思ってます。
これからも日々研鑽を重ね、自分が持っている経験や知識だけを盲信せず、様々なことから勉強して目の前の患者さんに全力を注ぎたいと思います。
いや〜、勉強って楽しいですねぇ(*゚∀゚*)