下腿の内側の痛みの原因~シンスプリント~
下腿の内側の痛み(シンスプリント)とは?
シンスプリントは、すねの内側にある骨の表面(骨膜)や骨に、繰り返し強い負担がかかることで起こります。
一般的には、筋肉が骨に付着する部分を繰り返し引っ張る力(牽引ストレス)と、骨そのものの細かい疲労(微小損傷)が主な原因とされています。特に、ふくらはぎの深部にある後脛骨筋やヒラメ筋、長趾屈筋などが、伸ばされながら収縮する動き(遠心性収縮)を繰り返すことで炎症が起こると考えられています。
当院では、これらの一般的な原因に加えて、体幹と股関節まわりの筋力・安定性の不足が、動きのクセを通じて大きく影響していると考えています。
なぜランナーに多いのか?
シンスプリントはランナーに特に多く見られる障害です。その大きな理由は、ランニングという動作の特性にあります。走るときには一歩ごとに体重の2〜3倍の衝撃が脚に加わり、1kmでおよそ1000回、フルマラソンでは数万回もの着地を繰り返します。たとえ小さな動作のクセでも、その回数が積み重なることで脛骨に大きな負担となり、炎症や痛みへとつながります。
さらに、ランニングを長く続けることで起こる筋肉の使われ方にも特徴があります。走る動作は一定のリズムで繰り返されるため、本来着地を安定させる大殿筋や中殿筋といったお尻の筋肉が徐々に働きにくくなっていきます。その結果、股関節が外旋しやすくなり、つま先が外を向いた状態での着地が増えます。
この外旋位での着地は、足の外側(小指側)から地面に接地する「回外位」を生みます。すると、ふくらはぎの深い筋肉は短縮したまま衝撃を受け、その直後に体重が一気に内側へ移動することで足首が急激に回内します。この「回外から急速回内」への切り替えは、筋肉を強く引っ張りながら伸ばす動きを繰り返すため、脛骨の骨膜に大きな負担が集中します。
つまり、ランナーにシンスプリントが多いのは、
・着地の衝撃が非常に多いこと
・殿筋や体幹の持久的な働きが不足しやすいこと
・その結果として、股関節外旋→小趾接地→急速回内という動作の流れが繰り返されること
この3つが重なっているからです。
シンスプリントを理解するうえでは、「単なる走りすぎ」だけでなく、体幹や殿筋の安定性の低下と、それに伴う動作のクセが大きな要因であることを知っておくことが大切です。
原因の主なタイプ
原因カテゴリ | 詳細内容 |
---|---|
骨盤中立位が保てない | 腹筋下部や骨盤底筋の機能低下により、骨盤が前傾または後傾しやすく、その結果として殿筋群に代償的な負荷がかかる |
殿筋不足 | ランニングで殿筋(特に大殿筋・中殿筋)の働きが低下すると、股関節の安定性が失われ、外旋位の着地が増える |
動作の癖 | 着地時に膝が内側に入る、腰を反らせて走るなど、繰り返される癖が殿筋や下腿内側に慢性的なストレスを与える |
動きの連動性の欠如 | 体幹や肩甲帯との協調が乏しく、股関節だけで動こうとするため、特定部位に負担が集中する。体幹と殿筋・ハムストリングスとの協調不足も含む |
出力のタイミング異常 | 殿筋群の反応が遅れ、代わりにハムストリングスや腰部の筋肉が過剰に働き、動作が外旋優位に傾く |
環境要因 | 長時間の座位によって殿筋の機能が低下し、走行中にうまく再活性化されず、股関節や足部に負担が集中する |
まとめ
シンスプリントは、単に「走りすぎ」だけでなく、体幹や殿筋の働きの不足、股関節や足の使い方のクセなど、複数の要因が重なって起こる障害です。特にランナーは一歩ごとに大きな衝撃を受け、その回数が数千〜数万回にも及ぶため、小さなアンバランスが大きな負担となりやすいのが特徴です。
また、症状のタイプや原因の背景は人によって異なるため、「自分はどのパターンに当てはまるのか」を理解することが改善と再発予防の第一歩になります。体幹や殿筋を含めた全身の安定性を整え、正しいフォームで走ることは、痛みの軽減だけでなくパフォーマンス向上にもつながります。
シンスプリントを正しく理解し、自分の体の状態に合わせて向き合うことが、長く走り続けるためには欠かせません。
下腿内側の痛み(シンスプリント)の治療方法についてはこちらで詳しく解説しています。
▶ 【下腿の内側の痛みの治療方法】~シンスプリントの治療方法~
実際に下腿内側の痛み(シンスプリント)で来院されたランナーの症例はこちらでご紹介しています。
▶ 【下腿内側の痛み(シンスプリント)の症例集】

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