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変形性股関節症症例1

2017年8月にお越し頂いた患者さん(Oさん)の症例です。
Oさんに症例集の話をしたところ快く引き受けて頂き、Oさんにこれまでの経緯を文章でまとめて頂きました。
 
 
60代前半 女性 先天性股関節脱臼有り
家族歴無し 子供の頃異常無し スポーツ経験少なめ
初めての痛み55歳頃 大きな怪我無し 出産経験有り

1990年頃より右股関節に違和感が生じ、整形外科3ヶ所を受診する。どの病院でも(臼蓋形成不全・先天性股関節脱臼の為)将来を考えたら手術をした方が良いと言われた。
1991年7月に右股関節の寛骨臼回転骨切術(RAO)を受ける。術後の経過も良く長距離も歩けるようになった。
その後結婚・出産を経た2009年12月頃より左股関節に痛みが出る。まず左膝裏に突っ張り感が出る。徐々に股関節周辺が痛み、階段の昇り降りも辛くなる。(階段は一歩ずつ足を揃えて昇降するようになる)
2010年1月地元の整形外科を受診する。将来的に手術した方が良いと言われる。(この段階ではまだ股関節の激痛はなく足の突っ張り感が主だった。)
足の筋力アップとダイエットを兼ねて6ヶ月ほど水中歩行を月1の割合で行うが3ヶ月ほどお世話になった整体の先生より負荷がかかりすぎるので水中歩行はやめた方が良いと言われやめる。この頃よりT字杖を外出時使うようになる。
2010年11月鹿児島市の整形外科を受診する。2方向からのレントゲン写真で棘が1ヶ所ある。2ヶ所になると骨が支えられるようになるから多少は良いかもしれない。年齢を考慮するとまだ手術には早いが義母の介護を考えるとこのままでは大変かもしれない。手術をする決断がついたら来てくださいとのことだった。傷心しての帰り道ふと立ち寄った本屋で松本正彦先生の「股関節痛は怖くない」が目に止まる。帰宅後、夢中になって読み「手術しなくても良いかもしれない」と思うようになる。この段階では会社内では杖は使用していないが移動時かなり跛行が目立つようになる。
2011年5月初めて霧島で松本正彦先生の施術を受ける。深圧(※1)の施術はかなり痛かったが良くなるためにと我慢した。施術していただき痛みがなくなったので「これだ!」と思ったが帰りに15分程して立ち寄った所でまた痛みが出て長続きしないのが悩みだった。それから4ヶ月毎に施術していただいた。結局2017年1月まで計17回施術をしていただいたが施術の間隔が長過ぎた事と自分自身の筋肉の硬さもあり股関節痛は解消されずその後何ヶ所か整骨院や整体に通っていた。※2
2017年7月体のバランスが悪いので(右側にかなり傾いて歩いていた)少しでも良くなるようにと2本杖を使用して2週間後左膝より20cm上まで非常に痛くなり、駐車場までの200歩が辛い状態だった。
7月末薩摩川内市の整形外科を受診。膝上が痛くて診てもらうが膝の骨の状態はまだ良いとのこと。股関節は手術した方が良いですとのことでリハビリを受け湿布を出してもらって帰宅する。病院のマッサージも15分程度で物足りないのと、このままで良いのかと不安もあり思い切って松本先生に連絡を取りさかうえ整骨院を紹介していただく。
2017年8月2日坂上先生の施術を受ける。ようやく深圧(※3)を受けられたと手応えを感じました。2本杖はまだ自分には早過ぎたと8月4日T字杖で出社。帰宅時なんとか痛み無く車まで戻れた。
その後だいたい月2回の割合で施術していただいてます。以前からすると膝上の痛みも少なくなっていますが長時間座った後がやはり痛くなるので自分でも何か対策を考えなくてはと思っています。買い物も以前からすると休まずに買い物ができるようになったと思っています。歩行姿勢が整骨院内では割と良いのですが帰宅途中やはり崩れるので意識しないと駄目だなと思います。会社内では椅子に座る時、何か引っかかるような感じなのでどうしたらスムーズに座れるかを自分で探らなくてはと思っています。

※1松本正彦先生が考えた施術方法で商標登録されています。
※2諸事情により松本先生が鹿児島への出張施術が出来なくなった為様々な施術場所を周りました。
※3細かいことになりますが、ぼくは松本先生より「深圧」という言葉を使って良いと言われておりません。商標登録されているので一応注意書きとして書きました。
 
大変ありがたいことにここまで詳しく書いていただきました。
内容と被ることもありますが、客観的視点でOさんを診ていきます。
 
主訴:左膝上の痛み及び左股関節周辺の痛み。
筋肉:左大腿前部・左下腿後部・左臀部筋力低下。腹筋拘縮。
歩行:腰部に軽度前屈位かつ歩幅が広く左側に流れ、猫背で歩行。歩行時や動き始めの際大腿骨と臼蓋が当たる音が出る時がある。
触感:うつ伏せになった時点で腰椎後弯が著しい為腰部に強度の張り。右の股関節を手術している為右臀部の筋肉群も硬さがあるも筋力自体は問題なし。左股関節外旋筋群拘縮気味。大腿筋膜張筋に強い張り。大腿四頭筋・内転筋・左下腿部が細く拘縮気味。足の指の使い方が上手く出来ていない。特に親指を使わずに歩いている筋肉になっていた。
治療:まず股関節の硬さと張りをとり、股関節が動かせる範囲で可動域を広げる。また、主訴である膝上の痛みは本人も自覚されていたが急に左大腿前部の筋肉を使い過ぎた事によるものと考えられ、大腿四頭筋をほぐせば痛みはとれると考えた。実際二回目来院された際痛みはだいぶ落ち着き、職場の駐車場を歩いても痛みなく歩けたとのこと。痛みが全体的に落ち着いてきたら左股関節の可動を目的とした様々な運動を試みた。当初は弱っていた左大腿部・左臀筋の筋肉をいかに股関節に負担なく鍛えていくかを考えていたが、どうもしっくりこなかった。そこで元ハンマー投げ選手の室伏広治さんの本に書かれていた全身の力を目一杯入れて抜く、目一杯指を指す事をすると歩行に変化があった。自宅でもして頂き、次来院された時明らかに効果があった。それまで様々なトレーニングをしたが成果をほとんど感じることがなかったが、筋肉が付いていた。Oさんにとって普通のトレーニングでは負荷が強過ぎたのだ。それからいっとき調子が良くなったものの、2018年のゴールデンウィーク前後に仕事や私生活の影響により左膝上の痛みが強く再発した。
歩行指導:杖のつき方、歩幅の広さ、筋肉の入れどころを伝えながらすると良くなるも、本人も自覚されているが整骨院以外での歩行が上手くいかない。
 
 
Oさんの文章について気になった部分だけ抜粋してぼくの意見を書きます。
 

>足の筋力アップとダイエットを兼ねて6ヶ月ほど水中歩行を月1の割合で行うが3ヶ月ほどお世話になった整体の先生より負荷がかかりすぎるので水中歩行はやめた方が良いと言われやめる。

実は水中歩行はそれほど大した負荷にはなりません。
その時の状態次第ではありますが、水中歩行よりずっと適した運動があります。
 

>施術していただき痛みがなくなったので「これだ!」と思ったが帰りに15分程して立ち寄った所でまた痛みが出て長続きしないのが悩みだった。

このことは初めて来院された時も話されていました。
これから読み取れることを簡単に書くと「痛みは消失させることは出来るが持続が出来ない」ということです。
ということは、持続出来るようにすれば良いのです。
そのためには痛みが無い状態での股関節の可動が必須です。
これは簡単に書いてますが、Oさんの場合股関節の変形が著しいため非常に難しいです。
 
 
 
ザックリではありますが、現状の客観的視点を書きました。
最初の主訴である左膝上部の痛みに関しては揉みほぐす事で痛みを軽減することは出来たが、仕事で座っていることが多く膝上部の筋肉がかたまり痛みが出やすく、股関節に不安定感が出てしまいます。
そのためどうにかして股関節から大腿部の筋肉を動かし、かたまらないようにすることと筋力をつけ不安定感を無くそうと試みておりました。
その考えをバッサリと捨てようと思います。
歩行時の不安定感を臀部・大腿部で補おうとするから上手くいかないと考え直しました。
体幹の筋肉を鍛えることで歩行時の不安定感を補う事にします。
体幹を鍛える分には股関節を動かすことはないので負担はありません。
体幹で不安定感を無くし、歩行時に真っ直ぐ歩けるようになれば自然と脚に筋肉がつくのでそちらにシフトする事にしました。
また、栄養指導も積極的にしていこうと考えてます。
歩行時のゴリゴリする音を聞く限り骨と骨がもろにぶつかっていると考えられます。
その間に軟骨を再生出来るかどうかわかりませんが、再生出来るよう栄養指導をします。
また、筋力を戻すためにもしっかりとした栄養指導をしなければなりません。
股関節に関することだけでなく、食事内容も積極的に聞いていきます。
 
 
ぼくの手技で股関節周りの筋肉をほぐすだけではOさんの悩みを解決することは出来ませんでした。
だからと言って諦めることは絶対にしません。
手技が足りないのであれば、他の解決策をひたすら考えれば良いだけです。
手技だけが全てではありません。
ぼくは自分自身が強度の高い運動をしていることもあり、トレーニングに関することは人よりも自信を持って伝えることが出来ます。
また実際のトレーニング方法は拳汰さんが深く勉強しているので任せることが出来ます。
そして、栄養指導に関してはまだまだぼくも勉強不足ではありますが伝えれることはかなりあります。
関節の痛みの種類によって補充する栄養素は違ってきます。
完全に再生するわけではありませんが、軟骨も再生しやすくする栄養素の補充方法もあります。
筋肉のコリやハリがとれやすくなる栄養素もあります。
それらを駆使してOさんの治療に挑めば痛みをとる事だって出来るとぼくは考えております。
 
「筋肉をほぐす」(筋肉を揉みほぐし痛みを緩和させる事が目的)
「筋肉を動かす」(筋肉を動かす事で筋力をつけ関節の痛みを筋力でカバーする目的)
「筋肉を喜ばす」(筋肉(関節)に適切な栄養を与えほぐす・動かすだけではカバーできない部分にアプローチする目的)
 
ぼくの施術は、揉みほぐすだけではなく、筋肉を動かし、筋肉に必要十分な栄養を与えることまでを含めてのものと考えております。
Oさんの痛みを完全になくしたいという気持ちも当然ありますが、それよりもOさんの笑顔を見たい一心で試行錯誤の日々が続いております。